サクラは咲いている美しさだけではない。
武士がサクラに見た潔さと儚さの美学。
<サクラ(桜)について>
サクラの淡い色合いや、散り際の儚さは、日本人の気性に合う性質を持っています。
サクラは美しいまま散るため、死に際の潔さを重んじる武士にも受け入れられていました。
「花は桜木 人は武士」とも言われました。
これは、一休宗純の狂歌と考えられています。
もともとは
人は武士、柱は桧(ひのき)、魚は鯛、小袖はもみじ、花はみよしの
という言葉だったようです。
「みよしの」は吉野のヤマザクラを意味し、江戸時代にこの部分が「花は桜木」に変えられました。
『平家物語』では、サクラの和歌がいくつも詠まれています。
サクラの儚さに世の無常さを重ね合わせていました。
戦国時代では、戦国武将たちはサクラを通して、武士の美学を見出していました。
武田信玄も、サクラの儚さを歌に詠んでいます。
立ち並ぶ かひこそなけれ 桜花
松に千歳の色はならはで
「立ち並ぶサクラが千年変わらないマツと比べて儚い」という意味です。
また、今川と戦った織田信長もサクラの歌を詠んでいます。
今川の 流れも末も 絶へはてて
千もとの桜 散り過ぎにけり
参考文献:
『世界史を大きく動かした植物』 稲垣 栄洋 (著) PHP研究所
『植物名の由来』 中村 浩 (著) 東京書籍