ダージリンに紅茶をもたらしたのはプラントハンター。
スコットランド出身のフォーチュンが中国に潜入してチャノキを手に入れた。
<紅茶について>
世界三大紅茶の一つと数えられているダージリン・ティー。
その産地である、インドのヒマラヤ山麓東部に位置するダージリン地方に、中国から茶の種と苗木を持ち出したのは、スコットランド出身のロバート・フォーチュンです。
フォーチュンは19世紀に活躍したプラントハンターで、この時代のプラントハンターの中で特に知られている人物です。
プラントハンターとは、18世紀から19世紀にかけて、アフリカ、アジア、アメリカなどの前人未踏の土地を探検し、植物を採取してヨーロッパに持ち帰った植物収集家です。
フォーチュンは、イギリス東インド会社の依頼を受けて中国内陸部に入りました。
東インド会社は、茶がイギリス国内で広がりイギリス人の必需品となったため、茶の種や苗木、製法を手に入れたいと考えていました。
当時の紅茶の製法は中国の最高機密で、ほぼ中国が独占する状態でした。
そこで東インド会社が目をつけたのが、数年前に中国に渡って数多くの園芸植物を持って帰った実績があるフォーチュンでした。
辮髪に中国服を身につけて変装したとはいえ、アヘン戦争直後で政情不安のある中で命の危険が伴う任務でした。
多くの困難を経ながら、フォーチュンはチャノキの種と苗をインドに送ることに成功しました。
中国人がチャノキの持ち出されたことに気づいた時は手遅れで、紅茶は広く世界で普及し、大衆文化となっていきました。
参考文献:
『紅茶スパイ』 サラ ローズ (著), 築地 誠子 (翻訳) 原書房